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水戸家庭裁判所 昭和52年(少イ)3号 判決 1977年10月12日

主文

被告人を懲役八月に処する。

未決勾留日数中一四〇日を右刑に算入する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、K・R子(昭和三四年六月二二日生・当時女子高校二年生)と共謀のうえ、後記A子、B子及びC子が、いずれも満一八歳に満たない児童であることを知りながら

第一  昭和五一年一〇月中旬ころ、茨城県鹿島郡○○町○○○○××××番地A子(昭和三四年一一月二〇日生・当時女子高校二年生)方に電話をかけ、同女に対し「本多さんの紹介だけど、大宮でもバイトがあるよ」などと申し向けて、売春の相手方となるように勧誘し、そのころ同県那珂郡○○町×××番地の×D方において、Eに対し「女を紹介してやつから」などと申し向けて、右A子の売春の相手方となるよう勧誘し、右両名の承諾を得、もつて売春の周旋をするとともに、同日同郡○○町○○○○××××番地所在のホテル「○」において、右Eを相手方として売春させて、児童である右A子に淫行させ

第二  同年一〇月中旬ころ、水戸市○○×丁目×番○○高等学校において、右K・R子がさきに売春の相手方の紹介を依頼されていたB子(昭和三四年一〇月一三日生・当時女子高校二年生)に対し「本多さんの友達でお金のある人がみつかつたから案内する」などと申し向け、そのころ被告人が茨城県那珂郡○○町××××番地○○住宅F方に電話をかけ、さきに売春婦の紹介を依頼されていた同人に対し「女の子がみつかつたから、俺のところへ来てくれ」などと申し向け、前記B子及びFの承諾を得て、右両名を肩書被告人方において引き合わせ、もつて売春の周旋をするとともに、前記第一記載のホテル「○」において、右Fを相手方として売春させて、児童である前記B子に淫行させ

第三  同年一〇月下旬ころ、水戸市○町×丁目×番×号○○ホテル内のレストランにおいて、さきに売春婦の斡旋方を依頼されていた前記Eを、C子(昭和三四年一一月三日生・当時女子高校二年生)に売春の相手方として紹介し、右両名の承諾を得、もつて売春の周旋をするとともに、そのころ同市○○○××××番地の×所在のモーテル「○○」において、右Eを相手方として売春させて、児童である前記C子に淫行させ

たものである。

(証拠の標目)

(編略)

(累犯前科)

被告人は、(1)昭和四四年一二月八日水戸地方裁判所において、強姦罪により懲役三年に処せられ、昭和四七年一二月七日右刑の執行を受け終り、(2)昭和五〇年一月三〇日同地方裁判所において、道路交通法違反罪により懲役三月に処せられ、同年九月一二日右刑の執行を受け終つたものであつて、右事実は、被告人の司法警察員に対する昭和五二年四月二二日付供述調書、前科調書及び水戸地方検察庁作成(府中刑務所指紋係発信)の刑執行状況回答(書)によつてこれを認める。

(法令の適用)

法律に照らすと、被告人の判示所為中、各児童福祉法違反の点は、同法第三四条第一項第六号第六〇条第一項に、各売春防止法違反の点は、同法第六条第一項に、なお共謀の点は刑法第六〇条に各該当するところ、右は一個の行為で二個の罪名に触れる場合であるから、刑法第五四条第一項前段、第一〇条により各一罪として、それぞれ重い前者の罪の刑で処断すべく、所定刑中いずれも懲役刑を選択するが、被告人には前示前科があるから、刑法第五九条第五六条第一項第五七条により、右各罪の刑に三犯の加重をし、以上は刑法第四五条前段の併合罪なので、同法第四七条本文、第一〇条により、犯情の最も重い判示第一の罪の刑に、刑法第一四条の制限にしたがい、法定の加重をした刑期範囲内で、本件犯行の罪質、態様、とくに児童らにもこれを誘発するが如き言動があつたとはいえ、被告人が妻を有する身でありながら、児童である前示K・R子と当時異性関係にある一方、同女ともども本件を敢えてしたものであることその他諸般の情状は考慮したうえ、被告人を懲役八月に処し、刑法第二一条を適用して、未決勾留日数中一四〇日を右の刑に算入することとする。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 中橋正夫)

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